人間と同じように、猫も糖尿病になります。何らかの原因で血液中の糖を細胞に取り込む作用を持つ「インスリン」の働きが悪くなると、血液中の糖濃度が上がり、高血糖になります。長期的に高血糖の状態が続くと、糖尿病になります。糖尿病は、体のいたるところに障害を来し、健康な生活が送れなくなってしまう怖い病気です。
一度糖尿病にかかってしまうと、インスリン注射や投薬などの治療を一生続けなければなりません。愛猫に辛い思いをさせないためにも、糖尿病のサインを把握し、すぐに気付けるようにしておきましょう。
また、肥満の猫は糖尿病になりやすいので、太った成猫は特に注意しなければなりません。肥満を解消できるキャットフードを与えるなどの対策が必要です。糖尿病対策とともに肥満の子に最適なキャットフードの選び方も併せて紹介しますので、フード選びの参考にしてください。
キャットフードお品書き♪
こんな症状はありませんか?見逃したくない糖尿病のサイン
最近では、愛猫に定期的な健康診断を受けさせているペットオーナーが増えてきました。そのおかげで、昔に比べてさまざまな病気を早めに見つけることができるようになってきています。しかし、猫の血糖値はストレスによって上がることもあるため、一度の検査で糖尿病と判断するのは難しいのが現実です。
糖尿病の治療を早めに始めるためには、飼い主が普段から猫の様子を観察しておくことが一番重要です。次のような行動や症状がある場合、糖尿病の可能性が高いので、不安に思ったらすぐに獣医師に相談しましょう。
・水をがぶ飲みするようになった
・以前と比べて食べ量が極端に増えた
・体重が減っている
・腹部がふくれている(肝臓の異常)
・目が白く濁って見える(糖尿病による白内障)
どの症状も、人間の糖尿病の症状とよく似ていることが分かります。かかってしまったら辛い治療をずっと続けなければいけないという点も、人間と変わりません。症状に気付いてあげることはもちろん大切ですが、できるなら糖尿病にかかってしまう前に予防してあげたいものですよね。
猫の糖尿病は何が原因?6歳を超えたら肥満に注意
糖尿病にかかる猫の性別の割合は、69%がオス、31%がメスとなっています。また、6歳を過ぎると有病率が高くなることも分かっています。糖尿病の原因には、飼い主が気を付けていても防げないものもありますが、食事に気を付けてあげればリスクを抑えることは可能です。主な原因をいくつか見ていきましょう。
・基礎疾患…もともと病気のある猫の場合、膵臓に発生した炎症がインスリンに対する反応を悪くさせることがあります。このような現象を引き起こす可能性のある疾患には、甲状腺機能亢進症、先端肥大症(90%がオス)、クッシング症候群(60%がメス)、腎疾患、肝疾患、心不全、腫瘍などが挙げられます。
・投薬…病気の治療のために薬を飲んでいると、インスリンの働きが低下してしまうことがあります。副腎皮質ステロイドや黄体ホルモン、利尿薬、心臓の薬、抗けいれん薬などが糖尿病の原因となる可能性のある薬です。
この2つが原因の場合は、飼い主が気を付けていれば防げるわけではありません。もともと疾患があるのなら糖尿病のリスクが上がってしまうのは仕方のないことですし、病気の治療のために飲んでいる薬をやめるわけにはいきませんよね。できるだけ早く糖尿病のサインに気付いて、治療を受けさせてあげてください。
しかし、次に挙げる発症原因となる2つのことは、食事の内容や与え方を工夫することで解消することができます。
・早食い・ドカ食い…一気食いをする習慣が付いていると、常に大量のインスリンが放出されるため、インスリンに対する細胞の反応が鈍くなってしまいます。少しずつ与える、猫が満腹感を感じられるフードに変えるなどの工夫で改善します。
・肥満…イギリスで行われた調査で、太っている猫は標準体重の猫に比べて、糖尿病を発症しやすいことが分かりました。食べ物の与えすぎや、間違ったキャットフード選びによって、肥満傾向の猫が増えてきています。猫のエネルギー代謝の仕組みをよく知った上で、肥満を解消できるようなキャットフードに切り替えましょう。
キャットフードを切り替える際は猫の体調をしっかり観察し行いましょう。
詳しくは「キャットフードの切り替えは愛猫の性格や体調に合わせることが大切!」で紹介しています。
特に肥満の場合、普段与えるキャットフードを変えることで大幅に改善することができます。市販されているダイエットフードを試しても効果がないケースが目立ちますが、猫特有のエネルギー代謝の仕組みを理解した上でキャットフードを選べば効果が現れるはずです。
肥満の猫に最適なキャットフードって?選び方のポイント
ホームセンターなどでも、ダイエット用のキャットフードが販売されていますよね。しかし、店頭販売されているダイエットフードのほとんどが、タンパク質や脂質を抑えて、満腹感を出すために穀物を多く使用しています。しかし、この「低タンパク低脂質」という栄養バランスは、かえって肥満を悪化させてしまうおそれがあります。
猫のエネルギー代謝の仕組みは人間と違いますので、猫本来の生態を考慮して理想的な栄養バランスを持つキャットフードを選びましょう。十分な栄養を効率よく摂取できれば、猫は無駄食いをしません。
肉材料を多く使った高タンパクのフードで効率の良い栄養補給
猫は完全な肉食動物なので、もともとは獲った獲物の肉からすべての栄養を補給していました。そのため、効率よく必要な栄養を補給するには、動物性のタンパク質がメインのフードを与えるのがベストです。肉や魚といった原材料を多く使用し、タンパク質の割合が3割以上のものが良いでしょう。
肉食動物にとって穀物は必要のないものです。穀物を多く使用しているダイエットフードは、一時的に胃が満たされるだけで、慢性的な栄養不足になってしまいます。肉材料をメインとしたフードで効率よく栄養を吸収できるようにしてあげれば、無理なくドカ食いや無駄食いをやめさせられます。
脂質は多いほうが良い!?猫にとって脂質は代謝しやすい栄養素
人間のエネルギー回路は、糖質をエネルギーに変え、脂質は脂肪として溜め込みます。しかし、猫はこの逆で、脂質をエネルギーとしてどんどん代謝していきます。そのため、脂質をカットしたフードを与えていると、エネルギーとなる脂質が足りなくなってしまい、満腹感を感じられません。
脂質をカットした「ヘルシーなダイエット食」を与えていると、猫は満腹感を感じられずに食べ過ぎて太ってしまう、といった悪循環に陥ります。活動量に対してあまりにもカロリーが高すぎるのは良くありませんが、ある程度の脂質は必要です。
「ダイエット=脂質をカットする」という考え方は、猫には当てはまりません。愛猫の肥満を解消したいなら、タンパク質や脂質が十分に含まれているものを選びましょう。成分比率としては、タンパク質:脂質=3:2の割合が理想的です。
肥満の猫にオススメ!理想的な栄養バランスのキャットフード一覧
タンパク質や脂質が多いキャットフードが良いとは言っても、さまざまな種類のフードが販売されていますので、どれを選んだら良いのか迷ってしまう人も多いでしょう。ここでは、肉や魚といった動物性タンパクを主原料としたキャットフードの中で、タンパク質と脂質のバランスが良い商品の名前と成分比率(タンパク質:脂質・%)を紹介します。
・カナガンキャットフード…37:20%
・シンプリーキャットフード…37:20%
・モグニャンキャットフード…30:16%
・ジャガーキャットフード…40:20%
・オリジンキャットフード…42:20%
この5つはいずれも完全な穀物不使用なので、消化吸収にも優れています。ただし、ジャガーとオリジンはタンパク質の割合がかなり高いため、高齢の猫には消化の負担が大きすぎるかもしれません。市販のダイエットフードに比べると値段は少々高めですが、病気のリスクが減る分、将来の医療費が節約できると考えることもできますよね。
一度かかったら、辛い治療を続けなければならない糖尿病。可愛い愛猫の健康を考えるなら、少しでも発症のリスクを減らしてあげたいものです。肥満になると、糖尿病に限らず、色々な病気のリスクが高くなります。普段の食事を健康的なものにして、健康上の不安要素を取り除きましょう。